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マザーツリー

 なぜ人類は異星人と交信できないのか?

 生物地理学者のジャレド・ダイヤモンドは知性を持った生物が存続できる時間は思ったより短命で高度な通信技術や移動手段を発明する前に絶滅してしまうのではないかと云っています。(私達人類はかなり崖っぷちにいる?)また知性とは人間だけのものではなく他の生物にもある多用なもので、ただ種を超えた知性同士のあいだでコミュニケーションが取れないだけなのかもしれない。そう宇宙の知的生命体だけでなく地上の様々な生物からのメッセージも私たちは気が付かないだけなのかもしれない。例えばクジラやゾウ、さらにはハチやアリなど動物あるいは昆虫などにも知性があるという話は耳にしたことがありますよね。

 しかし最近では植物にも知性があるのではないかという説を唱える人が世界各地に現れている。その一人カナダの森林生態学者スザンヌ・シマ―ドの著書「マザーツリー」を読みました。科学書というより自伝的な内容でしかもかなり森の生態が擬人化され実人生と重ね合わされている異色の科学本。その本によると森の木々は菌類を仲立ちとして地下でつながっていて水分や養分をやりとりしていることが分かって来たというのです。しかも自分の子孫だけでなく時には他の木々にも養分などを融通している。つまり「こっちは冬に葉を落として水を吸い上げることができないから水を融通してよ。夏になったら余った養分をあげるからさ。」「了解ザーマス。」なんてことを交信している?!。森の木々と菌類のネットワーク(森のインターネット)は数キロに及ぶこともありそのハブに樹齢千年を超すようなマザーツリーが立っている。その母性に守られて森の木々は共生圏を営んでいる。原生林にはそのような知性が存在するというのです。

 日本は森林大国ではあるけれど原生林はそのうちの4%しかありません。白神山地のブナの原生林は有名ですね。それ以外にも奈良県の春日山原生林というのもある。春日大社の神域として千年以上伐採が禁止されていて天然記念物に指定されているらしい。まあ厳密には原生林と言っていいのか疑問もありますが千年ぐらい自然な遷移を見守れば原生林と言っても許されるということでしょうか。それにしても千年ですよミレニアム。地質年代というのがあるけれど「森の時間」という時間軸も必要なのかもしれません。ただ人の営む時間とはあまりにもスケールが違い過ぎる。では神道によって千年守られる森があるなら千年前から守られたり伝えられたりしてるものはないかと調べたら枕草子と源氏物語がだいたい千年前に成立しています。そして千年読み継がれている。どちらも女性が作者というのも意味深てすが「マザーツリー」を書いたスザンヌ氏も女性ですね。この本も千年読み継がれるのでしょうか。森の生態を擬人化するのも賛否あると思いますが、やはり神聖視する方が手っ取り早い?そんな長大な森の時間について考えると里山というのはどうとらえればいいのでしょうか。話は長くなるので稿を改めて考察します。

 そうだ!私もマザーツリーと対面したことがあったのを思い出しました。屋久島の縄文杉です。もう8年前、2015年の秋にジェンベのフェスが屋久島の近くであったのでついでに立ち寄ったのでした。縄文杉は山の奥深くに在るので天気など条件が良ければ見てこようといういいかげんな旅行プラン。しかし月に35日雨が降るという屋久島ではめずらしく好天にめぐまれ約10時間の行程を日帰りでトレッキングしました。そんなこともあって写真の私はヤッタ感満載のミーハーオヤジになっています。まだ携帯のカメラというのも屋久島のガラパゴスって感じ。背景のマザーツリー・縄文杉は笑っているのか悲しんでいるのか、その声に耳を傾けることが今ならできる、かな。