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オーガニックと健康

 この春もバラが咲きました。実は昨年末バラの剪定をしながら来年の春はバラの花を見ることが出来ないかもしれないと考えていました。人生初の手術を前にして検査につぐ検査の合間にフトそんな思いがよぎったのでした。幸いこの春は赤いバラに加えて今年初めてピンクのツルバラも沢山花を付けていて私の無事を祝ってくれています。

 さて我家の菜園は基本「ズボラ農法」なのですが同時に「なんとなく自然農」「なんちゃってオーガニック」でもあります。ところがこの度体の健康を害してシビアにオーガニックと健康について考えてみました。

 

 みたのですが調べてみると確かに野菜を摂ることが健康に大切だというエビデンスはある。だけどオーガニック食品が健康によいという明確なエビデンスはないようです。またアメリカ国立ガン研究所はガンと野菜類の機能性について調べていましたが(ガン予防効果のある野菜を調べたデザイナーフーズとか有名みたい)結局明確なエビデンスが得られず現在は中断しています。(ちなみに巷で騒がれているような野菜の機能成分・ファイトケミカルについては私は懐疑的です)

 

 一方でこんなのもある。フランス国立健康医学研究機構疫学統計研究所が2018年に発表した報告によると「オーガニック食品をよく食べる人はまったく食べない人に比べて、ガンの罹患率が25%低いということが示された。」とくにリンパ腫が低くなり閉経期乳ガンが著しく低下したのだそうです。25%という有意な結果に発表した当局も驚いたらしい。まあこの調査をもってオーガニック食品の何が健康に影響したのかは分かりません。単にオーガニック食品を手にする人はもともと健康志向の人が多いからかもしれない。(なんかガンの話に偏ってるみたいですが個人的な理由によりますのでご了承ください)

 

 ところでオーガニックの野菜については「美味しい」という人が多い。私も確かに滋味があるように思います。とくに畑で完熟したトマトは濃厚な味がする。まあ菜園チストは自分で作っているわけで鮮度や熟成などのアドバンテージはたしかに影響しているでしょう。では流通しているオーガニック食品はどうなのか?前記のようなアドバンテージを差し引いても「美味しい」が単なる思い込みとも言えないような気がします。オーガニックと慣行農法を比べると投入している手間がだいぶ違うのではないか。それが食味にも影響している?

 実は私大規模農場で働いたことがあります。(コロナのおかげで次々に閉鎖となり短期間のうちにいくつかの農園で働くはめに・・・その分見聞は増えましたが)その経験から言えるのは企業の農業参入など経済効率や集約化が進む中で農薬や化学肥料に過度に依存することが増えているように感じるのです。結果、オーガニックに比べて人が作物に目をかけたり手間をかけたりすることが少なくなっている。それが食味に現れている気がするのです。またオーガニックの場合「土づくり」や「適地適作」がよりシビアになるし「旬」というのも重要になる。それらの要因も栄養や食味に影響しているでしょう。ただし昔ながらの零細農家が手間をかけて作っている場合は優劣はつけられない。市場にはそれらが混在しているので一概にオーガニック優位とはいえませんね。

 

 オーガニックと健康についてもう少し踏み込んで考えてみると「One Health」という考え方にたどりつきます。もともとは人獣共通感染症の増加に対処するため獣医学会や医学会が提唱した考え方で「人と動物と環境の健全性は一つ」というもの。当初は人と動物に重点があったようですが現在では他分野も巻き込んで環境の健全性も重要視されるようになった経緯があります。

 そもそも劣悪な環境の中で健康を維持するのは困難です。近年、公害や化学物質による環境汚染のような極端なものは少なくなったとはいえ、これだけ世界人口が増えると人間活動が環境に様々な影響を与えているのもまた事実です。二酸化炭素の増加はその典型ですね。いったい人類は健康や自然生態系についてどれほどの知識があるのでしょうか?科学の進歩は著しいですがまだまだ未解明のことも多い。慣行農業も安全性や環境への配慮は当然行われています。がクルマの排ガス規制のように基準はどんどん厳しくなっている。それにどう考えても化学肥料や農薬、除草剤、遺伝子組換えが環境にやさしいとは言えないでしょう。かといって世界人口の食糧をオーガニックだけで賄うことも不可能です。(土壌生態系などがもっと解明されれば不可能ではない?)なので賢明な選択としては環境に配慮した食品を買うこと。そして可能な範囲でオーガニック食品を購入して有機農家を応援することですね。

 

 で菜園チストとしての結論は不耕起によって土壌生態系も維持しつつ自分の体と環境の健全性を高めていくことです。

 近年腸内環境が免疫系や精神面にも影響しているという研究があるそうです。乳酸菌とか常在菌とかですね。だとすれば作物を作っている土壌微生物の生態系が腸の健康にも関与しているのではないでしょうか。ひょっとして自然農による家庭菜園というのは究極の健康法かもしれません。

 ちなみにこのバラたちは食用(エディブルフラワー)です。現在はバラジャムになって冷蔵庫で増殖中。